朝だけ血圧が高いのはなぜ?隠れ高血圧に注意!

朝だけ血圧が高いのはなぜ?隠れ高血圧に注意!

「朝の血圧だけが高いと言われたけど、日中は普通だから大丈夫…?」

そんなふうに思っていませんか?

実は朝だけ血圧が高くなる“隠れ高血圧”は、放置すると脳卒中や心筋梗塞など重大な疾患につながる可能性があるとされています。

特に健康診断では正常でも、家庭での朝の測定で高い数値が出るケースは多く、本人が気づかないうちに進行してしまうことも少なくありません。

この記事では、薬剤師の視点から

  • 朝だけ血圧が上がる原因
  • 隠れ高血圧のリスク
  • 自宅でのチェック方法と対策

について、やさしく丁寧に解説していきます。

「まだ大丈夫」と思っていたあなたにこそ、ぜひ知っておいていただきたい内容です。
大切な体を守るための第一歩として、ぜひ最後までご覧ください。

朝だけ血圧が高くなるとはどういうこと?

通常、血圧は一日の中で一定ではなく、時間帯によって変動しています。

一般的には、睡眠中は血圧が下がり、朝起きて活動を始める頃に上昇するという自然なリズムがあります。

しかし、ある程度の上昇幅を超えて「朝の血圧だけが異常に高い」という場合、それは「早朝高血圧」と呼ばれる状態です。

この状態は、病院や診療所で測る「診察室血圧」では正常でも、家庭での朝の測定でのみ異常値が出るという特徴があり、見逃されやすい傾向にあります。

■ 家庭血圧と診察室血圧の違い

測定タイミング正常とされる上限値
家庭での朝の血圧135/85 mmHg 以下
病院での診察時の血圧140/90 mmHg 以下

つまり、「朝だけ高いけど病院では正常」というケースでも、家庭での測定で135/85mmHgを超えていれば高血圧の疑いがあるということです。

次の章では、なぜ朝に血圧が高くなるのか、その主な原因について詳しく見ていきましょう。

朝に血圧が高くなる主な原因とは?

朝だけ血圧が高くなる背景には、体内のリズムや生活習慣、ストレス、睡眠の質など、さまざまな要因が関係しています。

以下に代表的な原因を解説します。

1. 自律神経の働き

人の体は朝になると交感神経(活動モード)が活発になり、血圧が自然と上がるようにできています。

これは目覚めと同時に体を動かす準備を整えるための自然な反応ですが、交感神経が過剰に反応してしまうと血圧が異常に上昇してしまいます。

2. 睡眠の質や睡眠不足

深い睡眠が取れない・寝不足が続くと、自律神経が乱れやすくなり、起床時の血圧が過剰に高くなるリスクがあります。

特に睡眠時無呼吸症候群(SAS)がある場合、夜間に酸素不足になり、朝の血圧が高くなりやすい傾向があります。

3. 朝のストレスや緊張

「時間に追われる朝」「通勤の不安」など、朝から交感神経を刺激するようなストレスは血圧の急上昇を招く要因となります。

4. アルコールや夜食、塩分の多い夕食

前日の飲酒や塩分の多い食事、夜遅くの食事は、翌朝の血圧に影響を及ぼすことがあります。

特にナトリウムの排出が遅れることで、翌朝の血液量が増加し、血圧が上がる原因になります。

5. 血圧の薬が切れている可能性

すでに血圧の薬を服用している方でも、夕方に飲んだ薬の効果が朝まで持続していない場合、早朝だけ血圧が上がってしまうことがあります。

この場合は服薬タイミングや種類の見直しが必要になることもありますので、医師や薬剤師に相談することが重要です。

これらの要因が重なることで、「朝だけ高い血圧=早朝高血圧」が起きやすくなります。

では、なぜこの「朝の高血圧」が問題視されているのか?
次の章では、放置によるリスクについて解説します。

放置すると起こるリスク(脳卒中・心筋梗塞など)

「朝だけ血圧が高い」と聞くと、なんとなく軽く受け止めてしまいがちですが、早朝高血圧は命に関わる重大な疾患を引き起こすリスクがあるため、決して見過ごしてはいけません。

1. 脳卒中(脳出血・脳梗塞)

早朝は血圧が自然に上がる時間帯であると同時に、脳卒中が起こりやすい時間帯でもあります。

特に血管が弱っている状態で急激な血圧上昇が起こると、血管が破れて出血(脳出血)を起こす可能性があります。

2. 心筋梗塞・狭心症

朝に胸が締めつけられるような違和感や息苦しさを感じたことはありませんか?

これは心臓の血管(冠動脈)が狭くなったり、詰まったりすることで血液が流れにくくなる状態で、朝の血圧急上昇によって引き金になることがあります。

3. 大動脈解離・大動脈瘤破裂

早朝の強い血圧変動は大動脈への圧力も増加させ、大動脈の壁が裂けたり、瘤(こぶ)が破裂するなどのリスクもあります。

4. 腎機能の低下

高血圧は腎臓の血管にも負担をかけます。これが続くと、慢性的な腎臓病(CKD)や腎不全につながる可能性もあります。

こうした重大な疾患は、早朝のわずかな血圧上昇を放置していたことがきっかけで発症するケースも多く報告されています。

「朝だけだから大丈夫」ではなく、「朝こそ注意すべき時間帯」として意識することが大切です。

次の章では、この「隠れ高血圧」に気づくためのセルフチェック方法についてご紹介します。

隠れ高血圧のチェック方法とセルフモニタリング

「隠れ高血圧」とは、医療機関では正常なのに、家庭で測ると血圧が高い状態を指します。

特に朝の家庭血圧が135/85mmHg以上である場合、早朝高血圧の可能性があります。

この章では、家庭で簡単にできる血圧チェックの方法を紹介します。

1. 家庭での正しい血圧の測り方

  • 起床後1時間以内、排尿後、朝食や服薬の前
  • 静かな場所で座って1〜2分安静にしてから測定
  • 腕に合ったカフ(測定帯)をしっかり巻く
  • 2回測って、平均値を記録

毎日同じタイミング・同じ条件で測定することで、正確な傾向がわかります。

2. 測定の目安と基準

測定場所正常とされる上限
家庭での朝の血圧135/85 mmHg 以下
診察室での血圧140/90 mmHg 以下

3. 血圧記録表やアプリを活用しよう

血圧を記録することで、一時的な変化なのか、継続的な高値なのかを把握できます。

最近では、スマートフォンと連動する血圧計や無料アプリもあり、自動でグラフ化できるものも便利です。

4. 記録を医師・薬剤師と共有する

気になる数値が続いた場合や、朝だけ高いと感じる場合は、記録を医療機関で見てもらいましょう

薬剤師に相談すれば、生活習慣や薬の飲み方のアドバイスも受けられます。

自分の体の変化を「見える化」することは、健康管理の第一歩です。

次章では、朝の高血圧を防ぐためにできる生活習慣や食事の工夫をご紹介します。

朝の高血圧を防ぐ生活習慣・食事の工夫

早朝の血圧上昇を穏やかに保つには、生活習慣と食事の見直しが非常に重要です。

ここでは、日常生活で取り入れやすい対策を紹介します。

1. 規則正しい睡眠習慣を整える

  • 毎日同じ時間に寝て、同じ時間に起きる
  • 就寝1時間前はスマホ・テレビなどの刺激を避ける
  • 7時間前後の安定した睡眠が理想

質の良い睡眠は自律神経を整え、朝の血圧変動を穏やかにしてくれます。

2. 夜遅くの食事・アルコールを控える

寝る直前の飲食は血圧上昇につながる可能性があります。

  • 夕食は就寝の3時間前までに済ませる
  • 塩分の多いメニュー(ラーメン・漬物・加工肉)は控えめに
  • アルコールは飲みすぎに注意(1日1合以下を目安に)

3. 朝食をしっかり摂る

朝食を抜くと、血圧が乱れやすくなると言われています。

おすすめは以下のようなメニューです:

  • バナナ、トマト、ほうれん草などカリウム豊富な野菜・果物
  • 納豆、豆腐、ヨーグルトなどの発酵食品やたんぱく質
  • 減塩味噌汁や玄米など、和食中心が◎

4. 朝のストレッチや深呼吸

目覚めてすぐに軽く体を伸ばしたり、深呼吸を行うことで、血流がゆっくり整い、急激な血圧上昇を防げます。

5. 寒暖差への対策

冬場の冷え込みや、朝の急な気温差も血圧を急上昇させる要因です。

  • 起床時は室温を20℃前後に保つ
  • トイレや脱衣所にも暖房を設置する

これらの習慣は、すぐにすべて完璧にする必要はありません。できることから一つずつ意識するだけでも効果があります。

次の章では、医療機関に相談すべきタイミングや、薬剤師にできるサポートについて紹介します。

受診の目安と薬剤師に相談できること

朝の血圧が気になる場合、どのタイミングで病院に行くべきか迷うこともあるかもしれません。

ここでは、受診の目安と、薬剤師に相談できるポイントをご紹介します。

■ 医療機関を受診すべきタイミング

  • 朝の家庭血圧が135/85mmHgを超える状態が数日続いている
  • 頭痛・めまい・息切れ・胸の圧迫感などの不調を感じる
  • すでに降圧薬を服用しているが、朝に血圧が高くなる
  • 健康診断では異常なしだが、家庭での測定が高め

これらに該当する場合は、早めにかかりつけ医や循環器内科を受診しましょう。

■ 薬剤師に相談できること

薬剤師は服薬管理や生活改善のアドバイスなど、医療の入り口としても活躍しています。

  • 血圧計の選び方・使い方の説明
  • 市販のサプリメントや健康食品との付き合い方
  • 降圧薬の副作用や飲み忘れの相談
  • 日常生活での塩分対策や食習慣のアドバイス

「病院に行く前にちょっと相談したい」という場合は、地域の薬局で気軽に声をかけてみるのもおすすめです。

また、薬局によっては血圧測定コーナーや生活習慣改善のパンフレットなども用意されています。

医師と薬剤師、それぞれの専門的なサポートを活用しながら、自分に合った血圧管理のスタイルを見つけていきましょう。

最後に、この記事のまとめと参考文献をご紹介します。

まとめ

「朝だけ血圧が高い」という状態は、一見すると軽く見られがちですが、脳卒中や心筋梗塞の発症リスクが高まる“見逃してはいけないサイン”でもあります。

特に、診察室では正常なのに家庭では高い値が出る場合は、隠れ高血圧=早朝高血圧である可能性があり、日々の測定と観察が重要です。

今回ご紹介した内容をおさらいしましょう:

  • 朝の血圧上昇には自律神経や睡眠の質、生活習慣が関係している
  • 放置すると脳卒中や心筋梗塞、腎機能の低下などにつながるリスクがある
  • 家庭での測定と記録を習慣にすることで早期発見が可能になる
  • 生活習慣の見直しや薬剤師への相談も有効な対策

「朝だけだから」と軽く考えず、自分の身体に目を向けるきっかけにしていただければ幸いです。

気になる症状がある方は、医療機関への相談や、薬局でのアドバイスを早めに受けることをおすすめします。


参考文献・出典

  • 日本高血圧学会「高血圧治療ガイドライン2022」
  • 厚生労働省 e-ヘルスネット「家庭血圧と早朝高血圧」
  • 日本循環器学会「高血圧と脳・心血管疾患に関する解説」
  • 日本薬剤師会「薬局でできる生活習慣病支援の取り組み」

※本記事は薬剤師の視点に基づく情報提供を目的としたものであり、診断・治療・予防を目的とするものではありません。気になる症状がある場合は、必ず医師や医療機関にご相談ください。

この記事を書いた人 Wrote this article

ゆうぞう

みなさんこんにちは! このサイトを運営しているゆうぞうと申します。 現在はとある調剤薬局で管理薬剤師をしております。 このサイトでは将来生活習慣病で困ることの無いように、今からできる対策などについて情報発信していきます。

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