なぜ便秘になるの?便秘の種類と原因を知ろう

便秘とは、排便の回数や量が減り、排便時に不快感や残便感を伴う状態を指します。厚生労働省の定義によれば、3日以上排便がない、または毎日排便があっても残便感がある場合は「便秘」とされます。
便秘には大きく分けて2種類あります。一つ目は「機能性便秘」で、食生活やストレス、運動不足などが原因で腸の働きが鈍くなることで起こります。二つ目は「器質性便秘」で、腸の病気や構造的な問題が背景にあるものです。多くの場合、日常的な便秘は前者の機能性便秘に分類されます。
また、便秘には以下のようなタイプがあります:
- 弛緩性便秘:大腸の運動が弱まり、便が腸内に長くとどまってしまうタイプ
- 痙攣性便秘:腸の過緊張で便の通過が不規則になるタイプ
- 直腸性便秘:便意を我慢する習慣が原因で直腸の感度が鈍くなるタイプ
このように、便秘は単に排便が少ないというだけではなく、さまざまな原因やタイプが存在するため、それぞれに合った対策が必要です。
腸内環境と便秘の深い関係とは?
腸内環境とは、腸内に存在する約1,000種類・100兆個以上の細菌(腸内細菌)が構成する「腸内フローラ(腸内細菌叢)」の状態を指します。これらの細菌は、善玉菌・悪玉菌・日和見菌に分けられ、健康な腸内環境ではこのバランスが保たれています。
腸内環境が乱れると、腸の運動機能(蠕動運動)が低下し、便の移動がスムーズに行われなくなります。また、悪玉菌が優勢になると腸内で有害ガスや毒素が発生し、腸壁の炎症や水分吸収の異常を引き起こすこともあり、便秘を助長する原因になります。
さらに、腸内細菌は短鎖脂肪酸(酪酸・酢酸・プロピオン酸など)を産生し、これが腸の動きを刺激して便通を促進します。善玉菌が減るとこの短鎖脂肪酸の産生量が低下し、便秘に拍車がかかるのです。
つまり、便秘を改善するためには、腸内環境のバランスを整えることが欠かせません。
腸活が便秘改善に効果的とされる理由
腸活とは、腸内環境を整えて腸の働きを活発にするための生活習慣や食習慣のことです。便秘の原因の多くは腸の運動機能の低下や腸内細菌のバランスの乱れによって起こるため、腸活は便秘改善に直結する対策といえます。
腸活では、主に以下のような点が便秘改善に役立ちます。
- 善玉菌の増加:腸活により善玉菌が増えると、腸内の発酵環境が整い、便のかさや水分が保持されやすくなります。これにより、スムーズな排便が促されます。
- 短鎖脂肪酸の産生促進:善玉菌が多い腸内では短鎖脂肪酸の産生が活発になり、これが腸の蠕動運動を刺激します。腸がしっかり動くことで、便が適切に運ばれるようになります。
- 炎症の抑制:腸活により有害菌の抑制が進むと、腸内の炎症リスクが下がり、腸の粘膜やバリア機能が正常に保たれます。これにより、腸の吸収・排泄機能が改善され、便秘解消へつながります。
また、腸活に取り組むことで、便通だけでなく肌の調子や免疫力の向上、気分の安定にも良い影響を与えるため、「便秘解消+α」の効果が期待できる点も魅力です。
腸活で取り入れたい食事・習慣のポイント

便秘を改善するためには、腸内環境を整える食事や生活習慣を意識的に取り入れることが重要です。以下に、腸活として効果的な食事と習慣のポイントを紹介します。
▶ 発酵食品を積極的に摂る
ヨーグルト、キムチ、納豆、ぬか漬けなどの発酵食品には、乳酸菌やビフィズス菌などの善玉菌が豊富に含まれています。これらを毎日の食事に取り入れることで、腸内の善玉菌をサポートすることができます。
▶ 食物繊維をバランスよく摂取
便のかさを増やし、腸の動きを促進するには食物繊維が欠かせません。不溶性食物繊維(ごぼう、豆類、玄米など)と、水溶性食物繊維(海藻、オクラ、りんごなど)の両方をバランスよく摂ることが大切です。
▶ 水分補給をしっかり行う
水分が不足すると便が硬くなり、排便が困難になります。1日1.5〜2Lを目安に、こまめな水分補給を心がけましょう。特に朝起きてすぐの一杯の水は、腸を刺激して排便を促します。
▶ 適度な運動で腸を動かす
ウォーキングやストレッチなどの軽い運動は、腸の蠕動運動を活発にします。日々の生活の中に無理なく運動を取り入れることで、便通のリズムを整える効果が期待できます。
▶ ストレスをためない工夫を
腸は「第二の脳」とも呼ばれ、自律神経の影響を強く受けます。ストレスがたまると腸の動きが悪くなり、便秘を引き起こす原因になります。リラックスできる時間や趣味を持つことも、腸活には大切です。
注意したい腸活の落とし穴と安全な進め方

腸活は便秘の改善や健康維持にとても有効ですが、やり方を間違えると逆効果になってしまうこともあります。ここでは注意点と、無理なく安全に取り組むためのポイントを解説します。
▶ 食物繊維の摂りすぎに注意
食物繊維は便秘改善に役立ちますが、摂りすぎるとお腹が張ったり、ガスがたまりやすくなったりすることがあります。特に普段あまり食物繊維を摂っていなかった人は、少量ずつ増やすように心がけましょう。
▶ サプリメントだけに頼らない
乳酸菌や食物繊維のサプリメントは手軽で便利ですが、基本は食事からの摂取を優先すべきです。サプリメントはあくまで補助的に活用し、バランスの良い食生活を第一に考えましょう。
▶ 極端な腸活ダイエットに注意
最近は「腸活ダイエット」として極端な食事制限を行う方法もありますが、これは体に負担がかかり、かえって腸内環境を悪化させてしまうことがあります。長期的に続けられる習慣として腸活を取り入れることが大切です。
▶ 医師や専門家への相談も視野に
長引く便秘やお腹の不調がある場合は、腸活だけで自己判断せず、医師や薬剤師などの専門家に相談することも大切です。特に高齢者や持病がある方は注意が必要です。
腸活は「続けること」が何よりも大切。無理なく、楽しみながら取り組むことで、自然と体も心もすっきりしていきます。
参考文献・参考情報
- 厚生労働省 e-ヘルスネット「腸内環境と健康」
- 日本消化器病学会「慢性便秘症診療ガイドライン 2021」
- 農林水産省「食物繊維のはたらき」
- 国立健康・栄養研究所「健康食品」の安全性・有効性情報
この記事を書いた人 Wrote this article
ゆうぞう
みなさんこんにちは! このサイトを運営しているゆうぞうと申します。 現在はとある調剤薬局で管理薬剤師をしております。 このサイトでは将来生活習慣病で困ることの無いように、今からできる対策などについて情報発信していきます。