腸内細菌とは?腸内フローラの主役たち

私たちの腸内には、およそ100兆個以上もの腸内細菌が存在しているといわれています。これらの細菌は約1,000種類以上にも及び、集団で棲みついている様子が「腸内フローラ(腸内細菌叢)」と呼ばれます。まるでお花畑のように、さまざまな菌が共生していることからこの名前が付けられました。
腸内細菌は大きく分けて「善玉菌」「悪玉菌」「日和見菌」の3種類に分類され、それぞれが異なる働きを持っています。これらのバランスが保たれていると、私たちの健康は良好に保たれますが、バランスが崩れるとさまざまな不調の原因になります。
たとえば、腸内細菌は栄養の吸収を助けたり、ビタミンの生成、免疫の調整などに関与していることが分かっています。つまり、腸内細菌は単なる「おなかの中の細菌」ではなく、私たちの健康全体を支える大切な存在なのです。
この記事では、そんな腸内細菌のなかでも特に重要な「善玉菌」「悪玉菌」「日和見菌」について、それぞれの違いや役割を詳しく解説していきます。
善玉菌の特徴と主な働き

善玉菌とは、腸内で人の健康にとって良い働きをしてくれる細菌のことを指します。代表的なものには、ビフィズス菌や乳酸菌などがあり、これらはヨーグルトや発酵食品に含まれることでよく知られています。
善玉菌の主な働きには、以下のようなものがあります:
- 腸内を弱酸性に保ち、有害な菌の増殖を防ぐ
- 免疫機能を整える(腸は免疫細胞の約7割が集まる重要な場所)
- ビタミンB群やビタミンKなどを合成する
- 整腸作用により便通を改善する
特にビフィズス菌は、大腸に多く存在し、乳酸や酢酸などの有機酸を産生して腸内環境を整える力があります。これにより腸のぜん動運動が促進され、スムーズなお通じにもつながります。
ただし、加齢やストレス、偏った食生活などによって善玉菌は減少してしまうため、日々の食事や生活習慣の見直しがとても大切です。
悪玉菌の特徴と影響とは?
悪玉菌とは、腸内で増えすぎると人体に悪影響を与える細菌のことを指します。代表的な悪玉菌には、ウェルシュ菌や大腸菌(有毒株)、ブドウ球菌などがあります。
これらの菌は、腸内で腐敗を引き起こす性質を持っており、たんぱく質や脂質が分解される際に、アンモニアや硫化水素、フェノール類などの有害物質を生成します。これらの毒性物質は、腸の粘膜を傷つけたり、血液中に取り込まれることで全身に悪影響を及ぼすことがあります。
悪玉菌が増えると、以下のような問題が起きやすくなります:
- 便秘や下痢などの腸内トラブル
- おならや便の悪臭
- 免疫力の低下
- 肌荒れや体調不良
悪玉菌は完全に排除すべきものではありませんが、増えすぎないように抑えることが重要です。特に、高脂肪・高たんぱくな食事や、ストレス、運動不足などは悪玉菌の増殖を助けてしまうため、注意が必要です。
日和見菌とは?腸内環境のバランスに注目

日和見菌(ひよりみきん)とは、腸内に常在する細菌のうち、善玉菌にも悪玉菌にも属さず、腸内環境のバランスに応じて働きが変わる菌のことです。代表的なものには、バクテロイデス属や大腸菌(無毒株)などがあります。
日和見菌の特徴は、「中立的な存在であること」。腸内の善玉菌が優勢なときは善玉菌のように振る舞い、逆に悪玉菌が優勢になると悪影響をもたらすことがあります。
このため、腸内では次のような3つの菌の勢力バランスが重要になります:
- 善玉菌:約2割
- 悪玉菌:約1割
- 日和見菌:約7割
腸内環境が乱れると、日和見菌が悪玉菌の味方になり、健康に悪影響を及ぼす可能性があります。つまり、日和見菌の働きを良くするためには、善玉菌を優勢に保つことが鍵になります。
腸内細菌の理想的なバランスと整え方
腸内細菌の理想的なバランスは、善玉菌2:悪玉菌1:日和見菌7の割合とされています。この比率を保つことが、腸内環境を整え、健康を維持する上で非常に重要です。
このバランスを保つためには、日々の生活習慣や食生活の見直しが欠かせません。以下のポイントを意識すると、腸内細菌のバランスが整いやすくなります。

1. 食物繊維と発酵食品を積極的に摂る
- 食物繊維:腸内の善玉菌のエサとなり、腸内フローラを整える
- 発酵食品:納豆、味噌、ヨーグルト、キムチなどが腸内環境の改善に効果的
2. 高脂肪・高たんぱくの食事を控える
動物性脂肪や加工肉などは悪玉菌の増殖を助けるため、摂りすぎに注意しましょう。
3. ストレス管理をする
ストレスは腸の働きに悪影響を与え、腸内細菌のバランスも崩しやすくなります。リラックスできる時間を持ち、ストレスをうまく発散することが大切です。
4. 規則正しい生活を心がける
睡眠不足や不規則な生活は、腸内リズムにも悪影響を及ぼします。生活リズムを整えることで、腸も元気になります。
まとめ|腸内細菌の理解が腸活の第一歩
腸内には数百種類・数百兆個以上もの細菌が住んでおり、私たちの健康と密接に関わっています。中でも、善玉菌・悪玉菌・日和見菌のバランスは、免疫力、消化機能、精神状態にまで影響を与える重要な要素です。
腸内環境を整える第一歩は、まず腸内細菌の働きや違いを理解すること。その上で、発酵食品の摂取や食物繊維の積極的な摂取、生活習慣の改善を心がけることが、健康への近道となります。
特に日和見菌は善玉菌・悪玉菌のどちらにでも傾くため、善玉菌優勢の環境をつくることが腸活成功のカギです。
ぜひ今日から、日々の食事や生活を見直し、腸内フローラのバランスを意識した「腸活」を始めてみてください。
参考情報
- 厚生労働省「健康づくりのための睡眠ガイド2023」
- 日本腸内細菌学会「腸内フローラの基礎知識」
- 農林水産省「食と健康に関する情報:発酵食品のはたらき」
- NHK健康チャンネル「腸活の基本とおすすめ食品」
この記事を書いた人 Wrote this article
ゆうぞう
みなさんこんにちは! このサイトを運営しているゆうぞうと申します。 現在はとある調剤薬局で管理薬剤師をしております。 このサイトでは将来生活習慣病で困ることの無いように、今からできる対策などについて情報発信していきます。