「血圧が高めと言われたけど、何を気をつければいいの?」そんな悩みを持つ方は少なくありません。特に近年では、食事や運動だけでなく「腸内環境」や「間食・飲み物の選び方」など、身近な習慣が血圧に大きく影響することがわかってきました。
この記事では、減塩だけにとどまらない「血圧を下げるための具体的な生活習慣のコツ」を、科学的根拠とともにわかりやすく解説していきます。体にいいことを、無理なく楽しく続けていくためのヒントを、ぜひチェックしてみてくださいね。

カリウムと血圧の関係
カリウムは血圧の調整に重要な役割を果たすミネラルです。
カリウムの主な働き
- 体内の余分なナトリウム(塩分)を尿や汗として排出しやすくする
- 血管を拡張させて血圧を下げやすくする
- 交感神経の活動を抑制し、心拍数や血圧の上昇を防ぐ
血圧への影響
ナトリウムを多く摂ると血圧が上がりやすくなりますが、カリウムをしっかり摂ることでナトリウムの排出が促進され、血圧を正常に保ちやすくなります。実際に、カリウムの摂取量が多い人ほど高血圧のリスクが低いという報告もあります。
科学的根拠
2017年のメタアナリシスによると、カリウム補給により収縮期血圧が平均4.25mmHg、拡張期血圧が平均2.53mmHg低下したという結果が示されました。特に、塩分を多く摂っている人やカリウム摂取量が少ない人では、血圧低下効果がより顕著です。
摂取の目安
- 日本人の目標量:成人男性で1日3,000mg以上、女性で2,600mg以上
- WHOの推奨量:1日3,510mg
- 日本人の平均摂取量は推奨より少なく、不足しがち
カリウムを多く含む食品

- 野菜:ほうれん草、小松菜、枝豆など
- 果物:バナナ、メロン、ぶどう、アボカドなど
- いも類:じゃがいも、さといも、さつまいも
- 豆類・乾物:きな粉、切り干し大根、干しずいき
- 海藻類:昆布、焼き海苔、ひじき
効率よく摂取するための調理のコツ
- カリウムは水に溶けやすいため、生野菜や果物で摂るのが理想
- ゆでた場合は「ゆで汁も一緒に」食べるのがベスト
- 電子レンジや蒸し調理、スープへの活用も効果的
注意点(過剰摂取について)
腎機能が正常な人では、通常の食事で過剰になる心配はありません。しかし、腎機能が低下している方や、特定の薬(降圧剤や利尿薬など)を服用している場合はカリウムの排出が難しくなり「高カリウム血症」を引き起こすリスクがあります。
吐き気やしびれ、不整脈、心停止などの危険もあるため、心配な方は医師に相談しましょう。
まとめ
カリウムは塩分を体外に排出し、血圧を下げるのに役立つ重要な栄養素です。野菜や果物、豆類、海藻類などをバランスよく摂り、調理法にも工夫を加えることで効率よく摂取できます。ただし、腎疾患がある場合は摂取量に注意し、医師の指導を受けましょう。

良質なたんぱく質と血圧の関係
良質なたんぱく質の摂取は、血圧のコントロールや高血圧リスクの低減に重要な役割を果たします。
多様なたんぱく源と高血圧リスク
- 動物性(魚・卵・乳製品)と植物性(大豆製品・豆類・全粒穀物・ナッツなど)をバランスよく摂取することで、高血圧リスクが最大66%低下するという報告があります。
- たんぱく質は多すぎても少なすぎてもリスクになるため、過不足ない摂取が大切です。
良質なたんぱく質の具体的な効果
- 血管の弾力性を保つ:コラーゲンやエラスチンの材料として働き、血流をスムーズに保ちます。
- 特定アミノ酸の作用:
- アルギニン:血管を拡張させる一酸化窒素(NO)の材料。
- タウリン:交感神経の働きを抑え、血圧の急上昇を防ぎます。
- 含硫アミノ酸:コレステロールの代謝を助け、動脈硬化の予防に。
おすすめの食材とその特徴

- 青魚(イワシ・サバなど):DHA/EPAが血流改善や血管の柔軟性に有効。
- 大豆製品(納豆・豆腐など):イソフラボンが血管収縮ホルモンを抑制し、血圧を下げる働きがあります。
- 乳製品(ヨーグルト・チーズ):乳由来ペプチドが降圧作用を持ち、たんぱく質の吸収も良好。
- 卵・鶏むね肉・白身魚:脂質が少なく、消化吸収がよく、日常の主菜に最適。
摂取量の目安
- 18〜64歳男性:65g/日、65歳以上男性:60g/日
- 18歳以上女性:50g/日
- 総エネルギーの13〜20%をたんぱく質で摂取するのが理想(例:2000kcalの場合、65〜100g)
摂取時の注意点
- 加工肉(ハム・ベーコンなど)は塩分が多いため控えめに。
- 高脂肪な部位や魚卵・レバーはコレステロール摂取過多の原因に。
- 腎臓病・痛風の人は、たんぱく質の摂取量や種類に注意が必要です。
過剰摂取によるリスク
- 腎臓や肝臓への負担増加
- 体重増加、便秘、尿路結石、痛風のリスク上昇
- たんぱく質の摂りすぎで腸内環境が悪化するケースも
実践ポイント
- 朝:納豆+卵ごはん、昼:鶏むね肉のグリル、夜:青魚の煮付けなど、1日を通して多様なたんぱく源を摂る。
- 植物性たんぱく質は食物繊維・カリウムも含み、血圧管理に最適。
- たんぱく質を摂る際は「質・量・バランス」を意識しましょう。
まとめ
高血圧を防ぐためには、良質なたんぱく質を適切な量でバランスよく摂ることが重要です。青魚や大豆製品に限らず、乳製品や卵、白身魚なども積極的に活用し、塩分・脂質の多い加工食品は控えましょう。

食物繊維で腸内環境を整えることと血圧の関係性
腸内環境を整えることは、血圧のコントロールや動脈硬化予防に直結しています。その中心的なカギを握るのが「食物繊維」です。
腸と血圧はつながっている?
腸は「第二の脳」とも呼ばれ、全身の健康をコントロールする中心のひとつです。実際に、高血圧の人では腸内細菌のバランス(腸内フローラ)が乱れており、血圧を安定させる働きのある善玉菌が減っていることがわかっています。
たとえば、善玉菌が減って悪玉菌が増えた腸内は、傷んだ水道管のようにバリア機能が壊れ、毒素や炎症物質が血液に入り込みやすくなります。これが血管にダメージを与え、結果として血圧を上げてしまうのです。
食物繊維が働くしくみ
- 食物繊維は小腸で吸収されず、大腸まで届く「天然のサプリ」。
- 腸内細菌のエサとなり、特にビフィズス菌や乳酸菌といった善玉菌を増やします。
- その際に「短鎖脂肪酸(酢酸・酪酸・プロピオン酸)」が作られます。

短鎖脂肪酸と血圧の関係
短鎖脂肪酸は腸の中で生まれる“天然の血圧降下剤”のようなもので、血流に乗って血管の壁に働きかけ、以下のような効果を発揮します:
- 血管を広げて血流をスムーズにする
- 炎症を抑えて動脈硬化を予防する
- 血圧を上げるホルモン(レニン・アンジオテンシン系)を抑制する
例えるなら、短鎖脂肪酸は「詰まりかけたホースに油をさして、スムーズに水を流れるようにする潤滑剤」のような役割を果たしているのです。
腸内環境が悪化すると…
- 有害物質TMAOの生成が増加し、血管を傷つけやすくなる
- 腸のバリアが壊れて炎症物質(LPSなど)が血液に流入 → 血管で炎症を起こしやすくなる
- 交感神経が過剰に働き、血圧が上がりやすくなる
科学的な裏付け
- 水溶性食物繊維(β-グルカンなど)を摂取した実験で、短鎖脂肪酸の増加と血圧の低下(収縮期平均-2.8mmHg)が確認されています。
- 食物繊維はLDLコレステロール・中性脂肪の低下、血糖値の安定にも寄与し、生活習慣病全体の予防効果があります。
便秘と血圧の意外な関係
便秘が続くと腸内の悪玉菌が増えて、炎症物質がたまりやすくなります。結果的に血管にも悪影響を与え、血圧が安定しにくくなるという報告もあります。
血圧対策としての腸活ポイント
- 食物繊維の目安:1日25g以上(野菜・海藻・きのこ・豆類などを意識)
- 善玉菌を増やす食材:ヨーグルト、納豆、味噌、キムチなどの発酵食品
- おすすめの組み合わせ:野菜+納豆、きのこ+味噌汁、フルーツ+ヨーグルト

実践アドバイス
- 朝食に「納豆ごはん+野菜味噌汁」、昼食に「雑穀ごはん+キムチ」、夕食に「きのこスープ+豆腐サラダ」など、毎食少しずつ取り入れましょう。
- サプリメントで食物繊維を補うのも1つの手ですが、まずは食事からの摂取が基本です。
まとめ
食物繊維をしっかり摂ることで腸内環境が整い、「短鎖脂肪酸」が増えて血管を守る効果が生まれます。血圧が高めの方は、“腸を整える”ことが“血管を整える”第一歩。今日から1品ずつ食物繊維を意識して取り入れてみましょう。

発酵食品で腸から健康に
発酵食品は、腸内環境を整え、血圧や血管の健康を内側から支える「自然のサポーター」です。
なぜ発酵食品が血圧対策に効くのか?
発酵食品に含まれる乳酸菌や納豆菌などの「善玉菌」は、腸内細菌バランスを整えるだけでなく、血圧を上げる要因を抑えたり、血管の柔らかさを保ったりする作用があることが近年の研究で明らかになっています。
イメージとしては、「発酵食品=腸内の庭師」。荒れた腸内の土壌を整え、血管という花が健やかに咲く環境をつくってくれる存在なのです。

発酵食品が働く主なメカニズム
- 善玉菌の増加:納豆菌や乳酸菌が、腸内でビフィズス菌などの善玉菌を2〜3倍に増やします。
- 短鎖脂肪酸の産生促進:発酵食品と食物繊維を一緒に摂ることで、酢酸・酪酸などの短鎖脂肪酸が腸で作られ、血管を拡張し、炎症を抑える働きをします。
- 悪玉菌や有害物質の抑制:納豆菌は腸内のクロストリジウム属菌を減らし、腐敗物質やTMAOなどの血管有害因子の産生を抑えます。
- 免疫力の向上:ヨーグルトや味噌の成分は、体の防御力を高めるIgA抗体やNK細胞を活性化し、炎症を防ぎます。
おすすめの発酵食品とその効果
食品 | 主な成分 | 効果 | 研究データ |
---|---|---|---|
納豆 | 納豆菌・ナットウキナーゼ | 血栓溶解、ビタミンK2産生 | 週5回の摂取で心疾患リスク15%低下 |
味噌 | 麹菌・メラノイジン | 肝機能改善、放射線防護 | 1日3杯の味噌汁で胃がんリスク33%減 |
キムチ | 植物性乳酸菌・カプサイシン | 脂肪燃焼、インスリン感受性向上 | 8週間で内臓脂肪5%減 |
ヨーグルト | ビフィズス菌BB536 | 花粉症軽減、便通改善 | 12週間で排便回数1.5倍増 |
効果を高める食べ方の工夫
- 発酵食品+食物繊維の組み合わせ(例:納豆+オクラ、ヨーグルト+バナナ)で腸内発酵力が約3倍に!
- 摂取タイミングは夜がおすすめ。睡眠中に腸の修復が進み、吸収効率がアップします。
- 多様性がカギ:納豆、味噌、ヨーグルト、キムチなど、週7種類以上をローテーションで。
注意点
- 塩分が多い発酵食品(漬物・味噌汁など)は、1日2品までを目安に。
- 過敏性腸症候群(IBS)の方は、キムチやザワークラウトなどの刺激が強い食品は控えめに。
- 抗生物質を飲んでいるときは、発酵食品は2時間以上空けて摂取しましょう。
まとめ
発酵食品は、腸内の善玉菌を増やし、短鎖脂肪酸の産生を助けることで、血圧を自然に下げるサポートをしてくれます。さらに、炎症を抑え、血管を健康に保つ働きもあり、まさに“腸から始める血圧対策”の主役とも言える存在です。
納豆、ヨーグルト、味噌汁など、今日の食卓に一品取り入れて、血管と腸を同時に元気にしましょう。
間食・飲み物にも気をつけよう
「ごはんは気をつけてるのに、なぜか血圧が高い…」そんな方は、間食や飲み物の“見落とし”が原因かもしれません。
意外と多い、間食・飲み物からの塩分・糖分
血圧に影響を与えるのは、主菜や主食だけではありません。おやつや飲料にも、塩分や糖分、カフェインなど血圧を上げる成分が潜んでいます。
たとえば、ポテトチップス1袋(60g)には塩分が1g以上、ペットボトルの甘いカフェオレ1本(500ml)には角砂糖10個分の糖分が含まれています。これは、健康な血管に“見えないストレス”をかけ続けているようなものです。

血圧を上げるNG間食・飲み物
- 塩分が多いスナック菓子・インスタント食品:ナトリウム過多に直結しやすい
- 甘い清涼飲料水・缶コーヒー:糖質過多→インスリン抵抗性→血圧上昇のループ
- エナジードリンクや濃い緑茶:カフェインの摂りすぎで交感神経が優位に
- アルコールの飲みすぎ:一時的に血圧が下がるが、飲みすぎで逆に上昇

おすすめの間食&飲み物(血圧を下げたい方に)
- 間食:
- 無塩ナッツ(アーモンド、クルミ)
- ゆで大豆、蒸し野菜
- カリウム豊富なバナナ、キウイ、ドライプルーン
- 食物繊維の多いオートミールや雑穀せんべい
- 飲み物:
- 麦茶(ノンカフェイン・ミネラル補給に◎)
- ルイボスティー(抗酸化成分も豊富)
- 豆乳(カリウムと大豆イソフラボンが血管にやさしい)
- トマトジュース(GABAやカリウム含有、塩分控えめのものを選ぶ)
よくある疑問Q&A
- Q:甘い物は完全にやめるべき?
A:我慢のしすぎもストレスになるので、週1〜2回、少量を楽しむ程度であれば問題ありません。 - Q:コーヒーはダメ?
A:1日1〜2杯のブラックコーヒーは問題ありません。ただし、血圧が高めの方は夕方以降の摂取は避けるのがおすすめです。
比喩でわかる!「間食と飲み物の選び方」
血圧管理中の体は「傷つきやすいガラスの器」のようなもの。そこに熱いスープ(=塩分・糖分・刺激物)を注ぎすぎると、ひびが入る原因に。普段の食事だけでなく、ちょっとした一口・一杯も、じつは大きな影響を与えているのです。
まとめ
血圧を下げるには、食事そのものだけでなく、間食や飲み物の質も見直すことが重要です。毎日の「ちょっとした選択」の積み重ねが、健康な血管を守り、高血圧予防につながります。
おやつも飲み物も「腸と血管にやさしいか?」を合言葉に選びましょう。
この記事のまとめ
高血圧は、単に「塩分を控える」だけではコントロールしきれない、複雑な生活習慣の積み重ねによって引き起こされます。この記事では、血圧を下げるために効果的な5つの食生活のコツをご紹介しました。
✔ 血圧を下げる食生活の5つのポイント
- カリウムを積極的に摂る
→ 余分なナトリウム(塩分)を体外に排出し、血圧を下げる。 - 減塩を「だし」や香辛料で工夫する
→ 味覚を満たしながら自然と塩分を減らせる。 - 食物繊維で腸内環境を整える
→ 善玉菌を増やし、短鎖脂肪酸の作用で血管を保護。 - 発酵食品を毎日取り入れる
→ 腸と血管の健康を内側から支える。 - 間食・飲み物の選び方にも注意
→ 塩分・糖分・カフェインを抑え、血圧にやさしい飲食を心がける。
血圧を下げるためには、特別な薬や食品よりも、「毎日の選択」を少しずつ変えていくことが何よりも効果的です。どれも難しいことではなく、今日から始められる小さな習慣ばかり。
あなたの血圧と血管を守る第一歩は、日々の食卓から。
無理のない範囲で少しずつ実践して、健康的な生活を積み重ねていきましょう。

参考文献・出典一覧
- 発酵のチカラとは? | 発酵Blend
- 腸内細菌と健康 | サントリーウェルネス
- 腸内環境と発酵食品の効果(PDF) | 宮健康会
- 発酵食品の健康効果 | 済生会
- 腸内フローラと健康の関係 | にんぎょう町内視鏡クリニック
- 発酵性食物繊維と腸内環境 | ミツカン公式ブログ
- 短鎖脂肪酸と腸の健康 | 川島屋
- 腸内細菌と病気の関係 | シスメックス
- 腸内フローラの役割 | 興和
- 発酵食品と食物繊維の併用効果 | 健康通販
- 腸内細菌と糖尿病の関係 | 糖尿病ネットワーク
- 短鎖脂肪酸とメタボリスク | 糖尿病ネットワーク
- 腸と全身の炎症 | サイエンスポータル
- 腸内細菌と疾患予防 | J-STAGE
- 農工大:腸内フローラ研究の成果
- 肥満と腸内環境の関係 | ひまん.jp
- 腸と血圧の意外な関係 | たまプラーザ内科
- 腸内細菌と高血圧の研究報告 | J-STAGE
- 短鎖脂肪酸とレニン系の調節 | JSBBA
- 乳酸菌と血管拡張作用 | 福岡天神内視鏡クリニック
この記事を書いた人 Wrote this article
ゆうぞう 研修認定薬剤師
みなさんこんにちは! このサイトを運営しているゆうぞうと申します。 現在はとある調剤薬局で管理薬剤師をしております。 このサイトでは将来生活習慣病で困ることの無いように、今からできる対策などについて情報発信していきます。