血圧が下がりすぎる原因とリスクとは?

「最近立ちくらみが増えた気がする…」「朝起きたときにフラッとする…」

そんなお悩みを感じたことはありませんか? 血圧が下がりすぎる状態、いわゆる「低血圧」は、一見すると健康に問題なさそうに見えますが、実は日常生活に支障をきたすこともある重要なサインです。

本記事では、薬剤師の視点から、低血圧の原因やリスク、対処法についてわかりやすく解説します。

特に慢性的な疲れや集中力の低下に悩んでいる方、高齢者の家族をケアしている方にとって、見過ごせない健康課題です。

血圧が「低い」というだけで済ませてしまうのではなく、その裏に潜むリスクを知ることが大切です。ぜひ最後までご覧ください。

血圧が下がりすぎるとは?

血圧とは、血液が血管の中を流れる際に血管壁にかかる圧力のことです。通常、血圧には正常値の範囲があり、これを大きく下回る状態を「低血圧」と呼びます。

日本高血圧学会によれば、収縮期血圧が100mmHg未満の場合、低血圧とみなされることが多いとされています。ただしこれはあくまで目安であり、症状や体質によって異なります。

特に重要なのは、「低血圧だからといって必ずしも問題があるとは限らない」という点です。もともと血圧が低めでも、日常生活に支障がなければ健康と判断されるケースもあります。

一方で、血圧の急激な低下や、慢性的に続く低血圧は、脳や心臓への血流不足を引き起こす可能性があり、注意が必要です。

たとえば、起立時にふらつく「起立性低血圧」や、食後に血圧が下がる「食後低血圧」など、日常的なシーンでもリスクが潜んでいます。

次の章では、低血圧が引き起こされる原因について、詳しく見ていきましょう。

血圧が下がりすぎる主な原因

血圧が下がりすぎる背景には、さまざまな要因が関係しています。ここでは代表的な原因を4つに分けて紹介します。

1. 体質的な低血圧(本態性低血圧)

遺伝や体質によってもともと血圧が低い「本態性低血圧」は、若い女性に多く見られるタイプです。疲れやすさ、冷え、朝のだるさなどの症状が出ることもありますが、医学的には病気とはされず、経過観察が一般的です。

2. 起立性低血圧

座っていたり寝ていた状態から急に立ち上がることで、血液が下半身に移動し、脳への血流が一時的に減少してめまいが生じる状態です。高齢者や自律神経の働きが不安定な人に多く見られます。

3. 薬の副作用や病気による低血圧(症候性低血圧)

心不全や糖尿病、自律神経障害などの病気、または降圧薬・抗うつ薬などの薬剤の影響で血圧が下がる場合があります。このタイプの低血圧は原因疾患の治療や薬の調整が必要です。

4. 食後低血圧

食事によって消化器に血液が集中することで、他の臓器への血流が一時的に減少し、血圧が下がることがあります。高齢者や自律神経の機能が低下している人に多く見られます。

これらの要因は単独でなく複合的に影響している場合も多いため、気になる症状がある場合は医師に相談することが大切です。

血圧が下がりすぎることによるリスク

血圧が低いだけで命に関わることは少ないものの、血流が不安定になることで、さまざまなリスクが生じます。代表的なものを見ていきましょう。

1. めまい・立ちくらみ・失神

最もよくある症状が「ふらつき」や「失神」です。これは脳への一時的な血流不足により、意識を保てなくなる現象です。特に起床時や長時間の立ち姿勢のあとに起こりやすく、転倒による怪我のリスクが伴います。

2. 集中力の低下・疲れやすさ

脳や筋肉への血流が少なくなることで、倦怠感や集中力の低下を感じることがあります。仕事や学業への影響も考えられ、慢性的な不調の原因になることも。

3. 臓器への負担・ショック状態

急激な低血圧や重度の低血圧では、心臓や腎臓などの重要な臓器への血流が著しく減少し、「ショック」と呼ばれる危険な状態に陥ることもあります。これは生命の危機を伴うため、早急な医療対応が必要です。

4. 日常生活への影響

日常的な動作が制限されることで、自信を失ったり、外出を控えるようになる方もいます。特に高齢者では、転倒や骨折を機に生活の質が著しく低下することも少なくありません。

これらのリスクを避けるためには、日頃から低血圧の兆候に注意し、適切な対策を講じることが大切です。

血圧が下がりすぎたときの対処法

血圧が急に下がったり、低血圧が続いてつらいときは、いくつかの対処法があります。ここでは自宅でもできる実践的な方法をご紹介します。

1. 水分と塩分の補給

脱水やナトリウム不足は血圧の低下につながります。特に夏場や起床時など、汗をかきやすい時期は意識して水分補給を行いましょう。スポーツドリンクや味噌汁も有効です。

2. ゆっくり動く・姿勢に注意

起き上がるときや立ち上がるときは、急に動かず、数秒かけてゆっくりと行動するようにしましょう。座ってから立ち上がる場合も、深呼吸を挟むとふらつきを防げます。

3. 睡眠と食事の見直し

十分な睡眠と規則正しい食事は、自律神経を整える基本です。朝食を抜くと低血圧になりやすいため、少量でも何か口にすることが勧められます。

4. 医師に相談する

何度も失神する、生活に支障が出るほど疲れやすいなど、重い症状がある場合は必ず医療機関を受診しましょう。薬の副作用などが原因の場合、処方の見直しで改善されることもあります。

無理のない範囲で生活を整えることが、低血圧の改善につながります。

血圧を適正に保つための生活習慣

血圧を安定させるためには、日々の生活の中での積み重ねが大切です。以下のような習慣を意識することで、低血圧の予防や改善が期待できます。

1. 朝食をしっかり摂る

低血圧の方は朝のエネルギーが不足しやすく、起立性低血圧の原因にもなります。軽くでもよいので、温かい飲み物やパン、スープなどを摂るようにしましょう。

2. 規則正しい生活リズム

睡眠と起床の時間を一定に保つことで、自律神経のバランスが整い、血圧の変動が安定します。就寝前のスマホ操作を控える、入浴で体を温めるなども有効です。

3. 適度な運動

軽いウォーキングやストレッチなど、血流を促す運動を日常に取り入れましょう。過度な運動ではなく、毎日続けられるレベルが理想です。

4. 血圧の定期的なチェック

低血圧は自覚症状が少ないため、家庭用血圧計での測定を習慣づけることが重要です。特に起床時と就寝前に測定することで、日々の変化に気づきやすくなります。

これらの習慣は、高血圧予防にもつながります。無理なく続けられる方法を見つけて、体調の安定を図りましょう。

まとめ

血圧が下がりすぎる状態、いわゆる「低血圧」は、ただの体質と片付けられがちですが、実は生活に支障をきたすことも少なくありません。

本記事では、低血圧の定義、主な原因、リスク、対処法、そして日常生活でできる予防策までを薬剤師の視点から解説しました。

めまいやふらつき、疲れやすさなどの症状がある場合は、無理をせず、自分の体の声に耳を傾けることが大切です。

もし症状が続くようであれば、自己判断せずに医療機関を受診するようにしましょう。

参考文献・出典

  • 厚生労働省「e-ヘルスネット」 https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/
  • 日本高血圧学会「高血圧治療ガイドライン」
  • 日本循環器学会・日本内科学会「循環器病の診断と治療に関するガイドライン」

※本記事は医療行為を目的とするものではなく、健康情報の提供を目的としています。

この記事を書いた人 Wrote this article

ゆうぞう

みなさんこんにちは! このサイトを運営しているゆうぞうと申します。 現在はとある調剤薬局で管理薬剤師をしております。 このサイトでは将来生活習慣病で困ることの無いように、今からできる対策などについて情報発信していきます。

TOP