「健康診断で血圧が高めと言われたけど、何を気をつければいいの?」そんな疑問をお持ちの方も多いのではないでしょうか。高血圧は自覚症状が乏しいにもかかわらず、脳卒中や心疾患など重大な病気のリスクを高めることが知られています。
その一方で、日々の食生活を見直すことで、血圧は十分にコントロールが可能です。特に、知らず知らずのうちに摂取してしまいがちな「高血圧にNGな食べ物」を避けることは、健康管理の第一歩です。
この記事では、薬剤師監修の視点から、高血圧の方が注意すべき食品や食べ方のポイントを、根拠とともにわかりやすく解説していきます。
高血圧と食生活の関係
高血圧は、遺伝的要因だけでなく、食事や生活習慣の影響が非常に大きい生活習慣病のひとつです。中でも、日本人の食生活において問題視されているのが「塩分の過剰摂取」です。
世界保健機関(WHO)は、成人の1日あたりの食塩摂取量を5g未満とすることを推奨していますが、日本人の平均摂取量はその2倍以上とされています。味噌汁や漬物、ラーメンなど、日常的に口にする食品に多くの塩分が含まれているため、無意識のうちに過剰摂取してしまっているのが現状です。
また、塩分だけでなく、脂質の多い食品やアルコール、糖分の多い飲料なども血圧に悪影響を及ぼします。これらを避ける工夫をすることで、降圧薬に頼りすぎることなく、自然な形で血圧のコントロールを目指すことが可能です。
注意すべき食品とその理由
高血圧の方が気をつけるべき食品は、単に「しょっぱいもの」だけではありません。塩分、脂質、糖分、アルコール、薬との相互作用など、様々な要素が血圧に影響を及ぼします。
ここでは、特に日常的に摂取されやすい5つのカテゴリについて、それぞれのリスクと避けるべき理由を解説します。
1. 塩分の多い食品

塩分(ナトリウム)の摂取が多すぎると、体内の水分量が増え、血液量が増加することで血圧が上がります。また、腎臓に負担がかかり、長期的には高血圧が慢性化するリスクも高まります。
以下のような食品は、少量でも塩分含有量が高いため、無意識に摂取してしまうことが多く、特に注意が必要です。
- 漬物(たくあん、ぬか漬けなど)
- 梅干し(1個で塩分2〜3gのものも)
- 佃煮、ふりかけ
- インスタントラーメン(スープを含めると塩分6g以上)
- 加工肉(ハム、ソーセージ、ベーコンなど)
- 味噌汁(具材よりも汁の塩分に注意)
- ちくわ、かまぼこなどの練り製品
これらの食品は、手軽に食べられる反面、塩分量の調整がしづらいという特徴があります。購入時には「減塩タイプ」や「低ナトリウム表示」のある商品を選び、調理の際は味付けを控えめにすることが推奨されます。
2. 脂質の多い食品

脂質の中でも、特に飽和脂肪酸やトランス脂肪酸は血中の悪玉コレステロール(LDL)を増加させ、動脈硬化の進行を助長します。血管が硬くなることで、血液の流れが悪化し、結果として血圧が上昇しやすくなります。
以下の食品は、脂質を多く含み、過剰摂取により血圧に悪影響を与える可能性があるため注意が必要です。
- 脂身の多い肉(バラ肉、霜降り肉など)
- 鶏の皮、豚の角煮など脂を含む部位
- バター、ラード、ショートニング
- 洋菓子(ケーキ、クッキー、ドーナツ)
- スナック菓子(ポテトチップスなど)
- 揚げ物全般(フライドチキン、天ぷらなど)
- 魚卵(たらこ、いくらなど)
- レバー(内臓系の食品)
脂質は体にとって必要な栄養素ですが、摂取量や質が重要です。飽和脂肪酸を含む動物性脂肪の摂取を控え、オリーブオイルや青魚に含まれる不飽和脂肪酸を適量取り入れるよう意識しましょう。
3. アルコール

アルコールは一時的に血管を拡張させる作用がありますが、長期的には交感神経を刺激し、血圧を上昇させる要因となります。特に毎日のように飲酒する方や、一度に大量の飲酒をする方は注意が必要です。
さらに、アルコールには食欲増進作用があり、ついつい塩分や脂質の多いおつまみを摂取してしまうことも高血圧を悪化させる一因となります。
代表的な高リスクな飲酒・食習慣の例:
- ビールや日本酒を毎晩500ml以上飲む
- アルコールとともにナッツ、塩辛、チーズなどを摂取
- 外食時の飲み放題や居酒屋メニューを頻繁に利用
厚生労働省の推奨では、男性で1日あたりアルコール20g(ビール中瓶1本程度)、女性で10gが適量とされています。血圧に影響が出ている方は、完全に断酒するか、少なくとも週に2日以上の休肝日を設けるようにしましょう。
4. 清涼飲料水や甘い飲み物

糖分の多い飲料は、肥満やインスリン抵抗性を引き起こしやすく、結果的に高血圧の発症リスクを高めるとされています。特に炭酸飲料や果汁飲料、エナジードリンクなどは、気づかないうちに大量の糖を摂取してしまう危険性があります。
以下のような飲料は、血圧を上げる間接的要因となる可能性があるため、日常的な摂取は避けるべきです。
- 炭酸飲料(コーラ類、サイダーなど)
- 果汁100%以外のジュース(果糖ブドウ糖液糖入り)
- スポーツドリンク(清涼飲料水扱い)
- エナジードリンク(高カフェイン+高糖分)
- 加糖コーヒー、缶入り甘い紅茶など
糖質過多は中性脂肪の上昇や内臓脂肪の蓄積を招き、代謝異常の一因となります。飲料は「水」「麦茶」「無糖炭酸水」などを中心に選ぶようにしましょう。また、果物由来のジュースも、量を限定して摂取することが大切です。
5. グレープフルーツ

グレープフルーツは、ビタミンCやクエン酸を豊富に含む健康的な果物ですが、高血圧の治療薬を服用している方にとっては注意が必要な食品の一つです。
その理由は、グレープフルーツに含まれる「フラノクマリン類」という成分が、肝臓にある薬物代謝酵素(CYP3A4)の働きを阻害するためです。この作用により、一部の降圧薬の血中濃度が過剰に高くなり、副作用のリスクが高まることがあります。
影響を受けやすい主な降圧薬の種類:
- カルシウム拮抗薬(例:ニフェジピン、アムロジピンなど)
- 一部のスタチン系薬剤(脂質異常症の治療薬)
グレープフルーツだけでなく、グレープフルーツジュースや一部の柑橘系飲料でも同様の作用があるため、日常的に摂取する前には必ず医師や薬剤師に相談しましょう。
なお、すべての降圧薬に影響があるわけではありませんが、食品と薬の相互作用は軽視できない問題です。自己判断での摂取は避け、安全性を第一に考えましょう。
高血圧予防のための食生活の工夫

高血圧は、食生活の見直しによって改善できる可能性が高い生活習慣病です。薬に頼る前に、まずは日々の食事内容を工夫し、血圧の上昇要因を減らすことが重要です。
以下は、血圧の安定と健康的な体作りのために実践できる食生活のポイントです。
- 減塩を徹底する(1日6g未満を目標に)
- だし・香辛料・酸味を活用して、塩分控えめでも満足感を得る
- 野菜や果物をたっぷり摂る(1日350g以上が目安)
- 脂質の質に注目(オメガ3脂肪酸を含む青魚や植物油を活用)
- 加工食品や外食の頻度を減らす
- 水分をこまめに摂る(利尿作用でナトリウム排出を助ける)
- 規則正しい食事時間を心がける(夜食や遅い時間の食事は避ける)
これらの習慣は、急激な変化ではなく、無理のない範囲で継続することがポイントです。「ちょっとした選び方」「ひと手間の工夫」が、長い目で見て血圧に大きな影響を与えます。
まとめ
高血圧は、自覚症状がないまま進行することが多く、「沈黙の病」とも呼ばれる厄介な生活習慣病です。しかし、日々の食生活を見直すことで、そのリスクを大きく下げることが可能です。
特に、以下のポイントに注意して食事を見直すことが大切です。
- 塩分の多い食品を避け、減塩を意識する
- 飽和脂肪酸の摂取を減らし、良質な脂質を取り入れる
- 飲酒は適量を守り、休肝日を設ける
- 糖分の多い飲料を控え、無糖や水を選ぶ
- グレープフルーツなど、薬と相互作用のある食品に注意する
高血圧の管理において最も大切なのは、「無理なく、継続できる生活習慣」です。一度に完璧を目指すのではなく、小さな改善を積み重ねていくことが健康への近道です。
気になる症状や食習慣がある場合は、早めに医師や薬剤師に相談し、専門的なアドバイスを受けながら、ご自身に合った生活改善を進めていきましょう。
※本記事は薬剤師による情報提供に基づき作成しています。診断や治療は必ず医師の指示に従ってください。
参考文献・出典
この記事を書いた人 Wrote this article
ゆうぞう
みなさんこんにちは! このサイトを運営しているゆうぞうと申します。 現在はとある調剤薬局で管理薬剤師をしております。 このサイトでは将来生活習慣病で困ることの無いように、今からできる対策などについて情報発信していきます。