「さっきまで普通だったのに、急に血圧が上がってびっくりした…」
そんな経験はありませんか?
実は、血圧は体調や環境の変化に敏感に反応するもので、一時的に急上昇することも珍しくありません。
特に現代人に多いのが、ストレス・偏った食事・睡眠不足などが引き金となるケースです。
これらは自覚がないまま日常に潜み、ある日突然「血圧の急上昇」として現れることもあります。
この記事では薬剤師の視点から、
- 血圧が急に上がるメカニズム
- 原因となる生活習慣
- 対策や予防方法
について、わかりやすく解説します。
「急な血圧上昇が気になる」「症状はないけど大丈夫かな?」と感じている方は、ぜひ最後までご覧ください。

血圧が急に上がるとはどういうこと?
血圧は、本来ある程度のリズムで変動するものです。
たとえば、睡眠中は低く、朝起きて活動を始めると自然に高くなります。
しかし、通常の範囲を超えて突然上昇する状態は、体に大きな負担をかける危険信号といえます。
■ 血圧の「急上昇」とは?
一般的に、短時間で20~30mmHg以上の上昇がある場合は「急上昇」と考えられます。
特に、最高血圧(収縮期血圧)が160mmHg以上に達するような場合は要注意です。
■ 急上昇が危険な理由
- 血管に過剰な圧力がかかる
- 動脈硬化があると血管が破れやすくなる
- 心臓や脳に負荷が集中する
このような状態が続くと、脳卒中・心筋梗塞・大動脈解離といった深刻な病気の引き金になるおそれがあります。
では、血圧が急に上がってしまうのはなぜなのか?
次章では、現代人に特に多い「ストレス」が関係するメカニズムについて見ていきましょう。
ストレスによる急上昇のメカニズム

血圧の急上昇には精神的・身体的ストレスが大きく関係しています。
特に現代の忙しいライフスタイルでは、仕事・家庭・人間関係など、さまざまな場面でストレスを感じることが多く、知らず知らずのうちに血圧が上がりやすい状態になっています。
■ ストレスで血圧が上がる仕組み
強いストレスを受けると、私たちの体は交感神経が優位な状態になります。
これは「戦うか逃げるか」の反応であり、心拍数が上がり、血管が収縮して血圧が一時的に急上昇します。
- 脳からアドレナリンやノルアドレナリンが分泌される
- 心拍が速くなり、血管が収縮する
- 結果として血圧が急激に上がる
これは一時的な反応として正常なものですが、頻繁に繰り返されたり、慢性的にストレスを抱えている場合は問題です。
■ 日常でよくある「ストレス高血圧」の例
- プレゼン前や会議中にドキドキして血圧が急に上がる
- 通勤ラッシュや渋滞でイライラしたとき
- 家庭内での怒りや不安が続いたとき
このような状況が続くと、血管への負担が蓄積され、慢性高血圧へ進行するリスクも高まります。
次章では、血圧急上昇のもうひとつの大きな要因である「食事」について詳しく見ていきましょう。
食事と血圧の急変の関係(塩分・油・アルコール)
日々の食事内容も、血圧の急上昇に大きく関わっています。
特に、塩分の摂りすぎ・脂質の多い食事・アルコールの過剰摂取は、血圧に悪影響を与えることが知られています。

■ 塩分(ナトリウム)の過剰摂取
塩分を多く摂ると、体内のナトリウム濃度が上がり、それを薄めるために体が水分を溜め込むようになります。
結果として血液量が増え、血管にかかる圧力=血圧が上がるのです。
- ラーメン・うどんなどの汁物
- 漬物・梅干し・味噌などの発酵食品
- 加工食品(ハム・ベーコン・インスタント食品)
これらの食べすぎは、知らず知らずのうちに塩分過多になります。
■ 動物性脂肪・トランス脂肪酸
脂質の多い食事は、動脈硬化を進め、血管の弾力性を失わせる原因となります。
血管が硬くなると、圧力を吸収できず、血圧が急に跳ね上がるリスクが高まります。
■ アルコールの影響
少量のアルコールであれば血管を拡張する効果がありますが、過剰に飲むと逆に交感神経が刺激されて血圧が急上昇します。
- 1日あたり:ビールなら350ml×1本程度が目安
- 毎日ではなく、休肝日を設けるのが理想
飲みすぎ+おつまみの塩分という組み合わせは、特に高リスクです。
「食べた直後は問題ない」と思っていても、翌朝や就寝中に血圧が上がるケースもあります。
次章では、もうひとつ見逃されがちな原因「睡眠不足と血圧の関係」について解説します。
睡眠不足が血圧に与える影響
十分な睡眠がとれていないと、血圧は不安定になりやすく、急激な上昇や慢性的な高血圧を引き起こす原因になります。
一見関係がなさそうに思える「睡眠」と「血圧」ですが、実は密接に結びついています。

■ 睡眠中の体は“血圧を休める時間”
人の体は、睡眠中に副交感神経が優位になることで、血圧を下げる仕組みになっています。
ところが、睡眠時間が短かったり、質が悪いとこの調整がうまく働かず、起床時や翌日に血圧が上がりやすくなるのです。
■ 睡眠不足が交感神経を過剰に刺激する
睡眠が足りないと、日中ずっと交感神経が優位=緊張状態になり、血管が収縮しやすくなります。
それによって心拍数の上昇・血管抵抗の増加が起こり、血圧も急激に上がりやすくなります。
■ 睡眠時無呼吸症候群(SAS)との関係
いびきがひどい、寝ているのに疲れが取れない、昼間に強い眠気がある――。
こういった方は睡眠時無呼吸症候群(SAS)の可能性があり、この状態では夜間に血圧が上昇し続けることが分かっています。
- 夜間の酸素不足 → 血管が収縮 → 血圧上昇
- 交感神経が常に刺激される → 血圧の回復ができない
■ 睡眠と血圧を安定させるには?
- 毎日6〜7時間程度の睡眠を確保する
- 就寝前のスマホやカフェインを避ける
- 寝る前の入浴やストレッチでリラックス
よく眠れていないと感じている方は、血圧管理にも直結する課題として、睡眠の見直しから始めてみましょう。
次章では、これまで紹介したリスクを踏まえ、血圧の急上昇を防ぐために今日からできる予防法をご紹介します。
すぐにできる対策と予防法
血圧の急上昇を防ぐためには、日常のちょっとした工夫と習慣の見直しがとても大切です。
ここでは、特別な道具や費用がなくても取り入れやすい具体的な方法をご紹介します。
■ 深呼吸やストレッチで緊張を和らげる
緊張やイライラを感じたときは、深呼吸を5回ゆっくり行うだけでも、交感神経の働きを抑え、血圧の上昇を防ぐ効果があります。
- 肩や首をほぐすストレッチ
- 腹式呼吸を意識する
- 深呼吸しながら目を閉じて30秒静かに過ごす

■ 減塩を意識した食生活に切り替える
- 出汁や酸味(酢・レモン)で味に変化をつける
- 加工食品やインスタント食品は週に1〜2回までに
- 味噌汁やスープは飲み干さない
1日6g未満の塩分摂取を目指すことで、血圧の急上昇リスクは大きく下がります。
■ 睡眠環境を整える
- 就寝1時間前はスマホやPCを控える
- 間接照明や落ち着いた音楽を取り入れる
- 枕や寝具を自分に合ったものに見直す
■ 血圧を測る習慣をつける
毎日同じ時間に測定することで、自分の血圧の傾向が見えてきます。
とくに朝起きた直後と、夜寝る前の測定は有効です。
気づいたときに少しずつ改善していくことが、血圧の安定と健康寿命の延伸につながります。
次の章では、「こんなときはすぐに受診を」という症状のサインについてご紹介します。
こんな症状が出たら受診のサイン
血圧の急上昇は、ときに命に関わる重大な病気のサインとなることがあります。
以下のような症状がある場合は、我慢せずに速やかに医療機関を受診しましょう。

■ 受診を急ぐべき症状
- 激しい頭痛(特に突然起こったもの)
- めまい・ふらつきがひどい
- 胸の痛みや締めつけ感がある
- 手足のしびれや力が入らない
- 視界がかすむ・見えにくくなる
- ろれつが回らない、言葉が出にくい
これらは脳卒中や心筋梗塞など重大な疾患の前兆である可能性があります。
特に高血圧の既往がある方や、血圧が160mmHgを超えるような数値が出た場合は、すぐに病院を受診してください。
■ 症状がなくても注意すべきケース
高血圧は「サイレントキラー(静かな殺し屋)」とも呼ばれるように、症状が出にくい病気です。
以下のような場合も、念のため医師に相談しましょう。
- 朝や夜に毎回140/90mmHg以上の血圧が続いている
- 以前よりも血圧が急に上がっている
- 市販薬やサプリを飲み始めてから血圧が上がった
「異変に気づいたら、早めの行動」が、命と健康を守る第一歩です。
次の章では、この記事の総まとめと、参考にした医療情報を紹介します。
まとめ
血圧が急に上がるという現象は、誰にでも起こりうる身近なリスクです。
ストレス、食事内容、睡眠の質といった日常の要素が、知らず知らずのうちに血圧に影響を与えているかもしれません。
今回ご紹介した内容をおさらいしましょう。
- 血圧の急上昇は、交感神経の活性化や塩分・アルコール・睡眠不足などが原因で起こる
- 放置すると脳卒中・心筋梗塞・大動脈解離などの重大疾患につながるリスクがある
- 深呼吸・減塩・良質な睡眠など、日常の工夫で予防が可能
- 異変や自覚症状がある場合は、早めに受診することが大切
血圧の急変を「たまたま」と見過ごさず、毎日の暮らしの中で少しずつ予防・対策を積み重ねていきましょう。
この記事が、あなたやご家族の健康を守る一助になれば幸いです。
参考文献・出典
- 日本高血圧学会『高血圧治療ガイドライン2022』
- 厚生労働省 e-ヘルスネット「高血圧」関連情報
- 日本循環器学会「循環器疾患のガイドラインと解説」
- 日本薬剤師会「生活習慣病予防と薬局の役割」
※本記事は薬剤師の視点に基づいた健康情報の提供を目的としており、特定の疾患の診断・治療・予防を行うものではありません。気になる症状がある場合は、医療機関への受診をおすすめします。
この記事を書いた人 Wrote this article
ゆうぞう
みなさんこんにちは! このサイトを運営しているゆうぞうと申します。 現在はとある調剤薬局で管理薬剤師をしております。 このサイトでは将来生活習慣病で困ることの無いように、今からできる対策などについて情報発信していきます。